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| 久助君の話
だれか集まっていそうな場所を探してまわるうちに兵太郎君にあった。みんなどこにいると聞いても、知らんという。乾草のところに転がっている兵太郎君を見て、久助君はここで兵太郎君と遊ぼうと思い、自分も体を乾草に投げつけていった。 兵たん、相撲とろうか、蛙とびやろうかと言ってものって来ない。兵太郎君の耳の中に草の先を入れていたずらすると、やめよォッとどなって、体がぶつかったのがきっかけで、二人は猫の子のようにくるいはじめた。しばらくは冗談のつもりでくるっていた。相手は本気でやっているのか、そんならこっちも真剣にならなきゃあ。いや、やはり冗談半分か、二つの疑問が交互に現れたり消えたりしたが、二人は狂い続けた。 やがて兵太郎君は抵抗しなくなった。久助君はふいと寂しくなった。兵太郎君は、身動きせずじっとしている。手をゆるめても、もうその虚に乗じて来ない。立ち上がって、何ともいえない寂しそうなまなざしで地平線あたりを眺めている。久助君の前に立っているのは兵太郎君ではない。自分はこんな知らない少年と半日くるっていたのか・・・。いや、やっぱりいつもの兵太郎君だ・・・。 よく知っている人間でも、ときにはまるで知らない人間になってしまうことがあるのだ。これは久助君にとって、一つの新しい悲しみであった。
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