牛は重いものを曳くので 首を垂れて歩く
牛は重いものを曳くので 地びたを睨んで歩く
牛は重いものを曳くので 短い足で歩く
牛は重いものを曳くので のろりのろり歩く
牛は重いものを曳くので 静かな瞳で歩く
牛は重いものを曳くので 輪の音にきゝ入りながら歩く
牛は重いものを曳くので 首を少しづつ左右にふる
牛は重いものを曳くので ゆっくり澤山喰べる
牛は重いものを曳くので 黙って反芻している
牛は重いものを曳くので 休みにはうつとりしている
作品紹介 南吉は、牛に対して特別の思いをもっていた。それは、牛の登場する物語や詩を数多く書いていることからもわかる。
物語では、「牛をつないだ椿の木」「和太郎さんと牛」といった代表作をはじめ「百牛物語」といった作品も書いている。詩では安城公園に碑として刻まれて在る石の「牛」が有名だが、しなやかでにおうように美しい「仔牛」という作品をはじめ、10篇を越す牛の詩を書き残している。「牛」は昭和14年2月13日の作である。