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| いぼ 疣
ある日、三人はたらいを持って山の池へ泳ぎに行きました。たらいにすがって池を横切るつもりでした。が、池の真ん中へ来て、三人はへとへとになり、もう泳げなくなりました。 土堤に近づけないので、絶望を感じていたとき、松吉が「よいとまァけ」と叫びました。これは田舎の人達が地がためなどをするとき、重い大きい槌を上げ下ろしするのに力を合わせるための掛け声、音頭です。これは田舎の言葉なので、町の克巳に聞かれるのは恥ずかしい言葉です。しかし今は必死なので何ともありません。杉作が泣き声で、克巳までが一緒に「よいとまァけ」と応じました。 この日ほど三人が心の中で仲良しになったことはありません。克巳は松吉の手のひらにある疣までほしいというのです。 秋のとり入れが終わり 、農揚げのあんころもちを克巳の家にとどけることになりました。克巳はいるだろうか、俺達の顔を見たら喜ぶだろう、疣はうまくついたかなど考えて松吉は胸ふくらませていました。しかし、克巳は冷たく知らん顔で、友達と二階へ行ってしまって、すっかり裏切られた思いでした。 松吉にはわかりました。田舎で一〇日ばかり一緒に遊んだことなど、町で暮らす克巳にとって何でもありわしないんだと。 兄弟は「どかァん」と大声で、大砲をうつまねをしながら、心を明るくしながら帰っていきました。
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