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| うち 家
七歳ともなると、子供は自分がこの世界に永く生きてきたような気がしているが、村はずれの塩屋に用事を頼まれたりする時、角一つ曲がるごとに不安と寂しさがつのる。でも用をすませて家へ向かう足取りは軽く、住みなれた明るい家について安心する。 幼い認識では、父も母も家も唯一絶対で、自分は世界の中心にいる。夏、海水浴に西の海岸の町に、春、花の撓に東の村へ行っても、その情景は虚ろに開かれた目の前を流れていくだけで、彼の心に位置を得ない。 子供が八歳になったある日、店の柱時計が止まった。丈夫だったお婆さんが突然倒れた程驚いた。時計を直しにいこう外した跡に、新しい木の色を見て、子供は過去という時を知った。時計は藤車にねかされたが、子供の幼い姿のようだ。 道は、むかし箒のような姿で、何か欠けているものを求めてさまよったとき、その跡に出来たという。時計屋に向かう親子の旅のようだ。 時計屋は自分の家に似ているし、母に似たお母さんたちにも会う。子供は他者を知って認識は相対化し、時計を直して家に帰り着いてもそこは暗く、母の温かさも感じない。そして本当の自分はどこにと懐疑が生まれた。時計を直す旅で、父や母は唯一絶対でなく、これまで世界の中心に占めてきた自分の位置は喪われたのである。
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