おぢいさんのランプ

 倉の隅で見つけたランプを持ち出して物珍しそうにしている東一君に、おぢいさんがそのランプの話をしてくれました。

 己之助少年はみなし子で、村の人の手伝いをして村に置いてもらっていました。ある日、人力車の先綱を引いて大野へ行き、そこで文明開化の象徴ともいうべきランプを見つけて、ランプ売りで生計を立てようと決心しました。

 ランプを売る商売に成功し、自分の家を持ち、お嫁さんをもらって子供も生まれました。しかし、ランプで新聞の字は見えても読めなければ本当の文明開化ではないと、毎晩区長さんの家へ字を教えてもらいにも行きました。

  己之助は、これでどうやらひとり立ちが出来たと、心に満足を覚えていました。ところが村に電燈がひかれることになり、ランプは売れなくなりました。人は自分の職を失うかどうかというとき、正しい判断が出来なくなることがあります。己之助は電気をひくと決めた区長の家に火をつけようとまでしますが、使っていた火打石に、「古くせえものは、いざというとき間にあわねえ」と言った自分のことばで、ランプから電燈への変化は進歩であり、時代の移り変わりであることに気づきました。

 己之助は家にある全てのランプに石油をつぎ、持ち出して半田池の岸の 榛の木の枝に一つ一つ火をともして吊るしました。そして長年なじんできたランプに、「わしの商売のやめ方はこれだ」と石を投げて、一つ一つ割っていきました。

 己之助は、この後町へ出て本屋になりました。この己之助というのは東一君のおぢいさんでした。

作品紹介
 巽聖歌から童話集出版の話があって書かれた作品で、昭和17年4月2日の作とある。生涯唯一の創作童話集「おぢいさんのランプ」(有光社、昭和17年10月10日刊行)七話中の一つである。

 昭和16年11月25日の日記に、父の話として、「人力曳きは体に無理をさせるからよく体をこわす。(略)名古屋から大野へ海水浴(潮湯治)に行く金持ち連が半田まで汽車できて、そこから大野まで人力を雇ったものだ。(略)父の父は道端(岩滑新田)で駄菓子屋をしていて、そこでよく人力曳きは休んだと。

 テーマ、電燈が村に入って来て、ランプの需要がなくなったのでもとの乞食商売にかえったランプ売りについて書く」とある。