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| 牛をつないだ椿の木
「あの清水が道に近いとええだが。」海蔵さんは井戸新さんに、しんたのむねの下に井戸を掘ると三十円かかると聞き、成金の利助さんに協力を頼みましたが「みんなの井戸にどうしておれが…」と断られてしまいました。椿の木に箱をつるして喜捨を呼びかけましたが集まりません。「人はあてにならん」と、好きだったお菓子も食わずに二年かけて必要なお金をためました。 ところが地主は、重病でしゃっくりが止まらないのに「死んでも許さぬ」と井戸を掘ることを承知してくれません。が、帰りに息子が「私の代になったら承知しましょう」と言ってくれました。 「これはうまい」と、海蔵さんは喜んでお母さんに話しました。するとお母さんは、「お前は、自分のことばかり考えて悪い心になった」とたしなめました。海蔵さんは、地主に「息子さんの言葉から、あなたが死ぬのを待つような心になりました。」と本心を告白し、謝りました。そんな海蔵さんに感心した地主は、井戸掘りを許可し、費用の援助もしてくれました。 海蔵さんは、日露戦争に出征し戦死しましたが、椿のかげの井戸には清水がゆたかに湧いています。
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